
「船の体育館」に関する考え
今、香川県で「旧香川県立体育館(船の体育館)」をめぐる問題が大きな注目を集めています。
現在私は、「船の体育館を再生する!」を支持しています。
「何故、公明党の市議会議員が、解体の中止に動き回っているのか?」とのご指摘が寄せられています。
そこで、少し長文になりますが、何故、春田が「船の体育館の再生」に思いを馳せているのか記します。
目次
・これまでの経緯
・現在認識している問題の争点
・「解体」ではなく「再生」を支持する理由
これまでの経緯
丹下健三氏設計の「船の体育館」の保存にむけ、長年多くの人が取り組んでこられました。しかし香川県で「苦渋の決断だが解体する」との決定が下された事はとても残念な思いをしていました。
7月23日
「旧香川県立体育館再生委員会による再生案が提案された」とのニュースを見て驚きました。すぐにその内容を確認するために会見の内容(YouTube)を見ました。
・解体判断の前提条件が変化している
・「費用をかけずに文化財を残す」選択肢として、解体延期を検討して欲しい
として、「建物倒壊の危険性がない」や「これまで県が探ってきた“保存”ではなく“民間資金による再生”を目指す」とした内容にとても興味を持ちました。一方でいくつかの疑問点がありましたが、県が十分な検証・検討が行われるだとうと期待をしていました。
その後、連日のマスコミ各社による報道が続き、私と同じようにこの報道を見た友人や市民からも、関心の声が寄せられました。
8月5日
再生委員会からの要望に対し県は「安全性の問題」や「事業の具体性」がないとの理由で、協議を行わず解体を進めるとの表明がありました。
8月14日
県の対応に大いに疑問を持っていた所、寄せられる怒りの声や保存・再生を願う署名活動の広がりを見て、公明党の県議に状況の説明を求めました。「認識せずして評価せず!」これは私の大切にしている指針です。そうしたところ、8月22日に県議と一緒に同席して、香川県教育委員会から直接状況の説明を得ることが決まりました。
8月18日
再生委員会から県議・市議へのアンケートが速達で送られてきました。なぜ市議に?との思いと、22日の説明を待って期限内に回答しようと考えたのですが、再生案への疑問点もあったので22日の時にその疑問に対する再生委員会の回答も手にしたうえで臨みたいと思い、質問を添えて回答をしました。ちなみにQ4の「県が取るべき対応」の設問には、気持ちは「積極的に協力すべき」に回答したかったのですが少し控えて「一旦保留して協議に応じるべき」を選択しました。
8月22日
残念ながら委員会からの返信はありませんでしたが、県から話を伺いました。とても丁寧にこれまでの経過含めて説明いただきました。現在の対応(協議を行わないとする)理由を要約すると、
- 安全性の問題(技術面)の課題
再生委員会の会見では耐震化は容易で安全性に問題ないとしていたが、県では過去の耐震診断の結果(丹下事務所の)から、大地震時に倒壊の危険性が高いと判断。見解が相違している。 - 事業性の問題
誰が契約の主体者か分からず、示された2つのプランも到底実現性があるとは思えない(宿泊単価が高額、ブックラウンジは荷重に耐えられない等)。企業の参加表明にも不確実性がある。 - 民主的な手続きの問題
議会も交えた民主的な手続きを踏んで決定したことを、大きな声(企業の大金)で民主的な手続きを覆すことは、あってはならない。 - 民意が高まっているとは言えない
マスコミは連日報道しているが、あまり市民から直接声が届いていない。特に経済界からの声が上がってこない。
これらの理由で、解体工事の手続きを止める判断に至らないと判断。協議を行うということは、一定の方向性(再生の道を探る)を持って行われるべきものなので、話は聞くが協議は行わないというものでした。
また、9月5日に応札されれば直ちに契約が成立するのかを尋ねると、応札者が決定後、内容を精査するのに1カ月以上を要する事。10億円の工事の為に議会の議決を要する事。議会の前には文教厚生委員会に諮る必要性があるとの考えもお聞きしました。
私は、7月18日に再生委員会から示された新たな事実の出現は、県議会で解体を議決した時と大きく前提条件が変わったと認識してる事を伝えました。行政が手続きを進めることに理解を示した上で、判断するのは政治の役割であるため、県議会で適切に審議できるよう情報を整理し、丁寧に進めて欲しいことを伝えました。
8月26日
再生委員会による2度目の会見の動画を全て見ました。県からの「安全性」と「事業性」への疑義に対する反論です。
複数の専門家の見解で「倒壊の危険性なし」には大きく驚かされました。県が解体を急ぐ根拠が根底から変わります。また事業計画の詳細も示され、私が抱いていたいくつかの疑問点にも明確な回答が示されていました。
・委員会の目的(ゴール)はあくまでも県と再生に向けた協議の場を設けること。協議が開始されれば、県の意向に沿い改めて公募などに対応してプランを提出する意向。
・万が一事業が計画どおりに進まなかったとしても、耐震工事を終えた建物となり、次の事業者に引き継げる。民間再生による重要文化財指定が行われれば、更に保存の可能性が高くなる。
など、明確な説明でした。
8月27日
会見内容で十分で認識できましたが、「対立する意見に際しては両方からの意見を直接聞く」が私の信条であることから、再生委員会(長田氏)にアポイントを取り、話を伺いました。提案の内容は充分に信頼に足るものと判断しました。
現在認識している問題の争点
論点 | 香川県(解体) | 旧香川県立体育館再生委員会(再生) |
建物の価値 | 価値は高いが、老朽化し、耐震性に問題がある施設 | 国際的に評価される丹下健三の貴重な建築遺産 |
安全性 | 大地震時に倒壊の危険性があり、周辺の緊急輸送路をふさぐ可能性がある | 複数の専門家が倒壊の危険性なしと評価 耐震改修によって安全性を確保できると主張 |
財源 | 解体費用として約10億円の公費を計上 | 民間資金(企業投資と融資)で費用を全額負担(30億円~60億円を想定) |
改修・維持コスト | 耐震改修には多額の費用が必要で、サウンディング調査も不調で維持困難 | 現在の技術と民間転用で、改修コストも低減 宿泊施設など収益化することで、維持・管理費用を賄う |
将来の活用 | 解体後は未定 | ホテルなど商業施設などに転用し、観光や地域振興に繋げる 民間再生による重要文化財の最初のケースとなる可能性大 |
判断の背景 | 県の財政負担や安全性を優先し、解体が合理的と判断 | 文化的価値の保存と、経済効果の両立を目指す |
民主的な手続き | 議会を経た民主的な手続きを踏んでいる。民間がお金の力で覆すことがあってはならない。 | 「解体やむなし」との判断の根拠とした、安全性・民間資金による再生プランの提案の出現は、大きく前提条件が変わった。再度、議会での検討が必要。 |
旧香川県立体育館の解体は、香川県に複数の影響を与える可能性があります。
文化的・観光的影響
- 文化遺産の損失: 旧香川県立体育館は、日本のモダニズム建築を代表する建築家である丹下健三の傑作であり、メタボリズム建築の重要な事例とされています。この建物を解体することは、国際的にも高く評価されている貴重な文化遺産の喪失を意味します。
- ブランドイメージの低下: 世界の建築家や専門家、大学(ハーバード大学など)からも保存を求める声が上がっており、解体は「文化を軽視する県」として国際的なブランドイメージを損なう可能性があります。
- 観光資源の損失: 保存・再生案では、この建物をホテルや多目的ホールとして活用し、新たな観光名所とする計画が提示されていました。解体することで、そのような観光資源となる可能性が失われます。
経済的影響
- 解体費用の発生: 県は約10億円の公費を投じて解体する計画であり、この費用が発生します。
- 民間投資機会の損失: 民間資金による再生案では、初期投資額が30~60億円、年間経済波及効果が3~7億円と試算されていました。工事は地元企業を優先することも主張。解体することで、県財政に負担をかけずに経済効果を生み出す機会を失うことになります。
- 将来的な価値の損失: 丹下健三の作品は国内外から注目されており、将来的にその価値はさらに高まる可能性があります。解体は、その潜在的な経済的価値を永久に失わせることにつながります。
「解体」ではなく「再生」を支持する理由
これらを総合的に判断すると、長期的な視点に立ち、文化財としての価値や民間活力を利用した持続的な地域振興を重視するならば、再生案に優位性があると考えています。
私は、香川県が手続きに則って進めてきたプロセスを否定するものではありません。しかし、再生委員会から示された新たな事実の出現は、解体を決めた時と前提条件が大きく変わったと認識しています。新たな事実の出現があったのであれば柔軟に対応する、改めて民主的なプロセスで公開された議論が必要だと考えます。
このような事から、県政の事ではありますが、高松市にも重大な影響を及ぼす為、船の体育館の再生を望む県民の一人として、そして高松市議会議員として、再生への道を応援すると決意しました。
8月31日
サンポートで署名活動を行うとの知らせを聞きつけ駆けつけました。一緒にビラを配る中で、その活動に勇んで馳せ参じている若い方々の姿、ビラを受け取って署名に賛同してくださる方々の姿を肌身で感じました。
9月2日
再生委員会から、高松市議会に香川県に対し『「旧香川県立体育館の解体工事手続き保留と利活用を目指した協議実現を求める意見書」を提出する陳情書』が提出されました。市議会でもこの問題について議論が行われることになりました。
「信なくば立たず!」今、政治への信頼が大きく問われています。
私は、高松市議会での議論の過程をしっかり市民の皆まさに可視化することが重要だと考えています。
日々、様々な方との対話を重ね情報を集め、市議会での議決が行われる9月26日まで、真摯に向き合いたいと考えています。私の認識に誤りがあれば改め、より良い討議ができるよう努めて参ります。
皆さまからの声をお聞かせください!